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ショパン「ワルツ(全20曲)」(イングリッド・フリター:ピアノ) [ピアノ]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] 女性ピアニストによるショパンのワルツの全曲盤は珍しいと思うが、新譜が、DG盤のアリス=沙良・オットのものと重なった。一体に中庸なテンポでお嬢さんぽいオットに対し、アルゼンチン生まれでアルゲリッチに認められたというフリターは、緩急・強弱のメリハリが非常に強い。初期の作品などは速いテンポで強力な指の回転をみせ、技巧的には相当なレベルと思う。ウィーンの大舞踏会を連想させるワルツは、ここでの演奏のとおり、本来は運動量の多い非常に速いテンポの踊りだ。円舞曲と訳されるように、ぶんぶん回るのだ。しかしショパンは後期になるととたんに深い陰影が出てくる。ワルツは社交的であることが義務付けられたような音楽だから、粋な男性ピアニストはそれでも明るく全曲を仕上げるが、ひたすら前進するフリターも力強くまとめ、聴取後は爽快だ。[EMI]


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「ピアノによるルロイ・アンダーソン」(白石光隆:ピアノ) [ピアノ]

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[目][黒ハート] ルロイ・アンダーソン自身のピアノ編曲版による小品集。25曲ほどで、有名曲はほとんど網羅されている。アンダーソンの曲の多くは、ボストン・ポップス管弦楽団(ボストン交響楽団に同じ)のために作られたが、家庭での演奏用にピアノ用に編曲されたのだろう。3分程度の曲がほとんどなのは、SPレコードを意識されて作られたからという。こういう大衆性は、私たちが音楽史に初めて見るようなものだ。白石光隆は、ジュリアードで学んでいることからアメリカ文化のルーツのような曲の演奏にはふさわしく、どの曲も洒落た感じやユーモアをよく出していて、大変に楽しめる。これらの曲が作られたのは1938年から1954年まで。1956年にはプレスリーの「ハートブレイク・ホテル」がLP(EP)で出て、60年代にはビートルズが上陸、以後のアメリカ音楽史は誰もが知る通りだ。[KING]


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「début」(辻井伸行:ピアノ) [ピアノ]

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[わーい(嬉しい顔)] 話題のCD。2枚組で、1枚目はショパン、リスト、ラベルの作品集、2枚目は自作小品集になっている。演奏は、柔らかな指使いで、ぐいぐい引っ張る。収録時間・価格からすると、2枚目はオマケという位置付けなのだろうが、内容的にはその2枚目の方が断然面白い。どれもポップス・ソングか映画音楽のように親しみやすいメロディーを持っているが、演奏の格調は保たれ、「川のささやき」は、きらきらした情景描写が滑らかなピアノ演奏ともども感動的だし、「セーヌ川のロンド」は、曲も演奏も隅々まで幸福感に満ちていて心が明るくなる。昔、名だたるピアニストはみな作曲家だった。20世紀前半でさえ、ショスタコービッチは第1回ショパン・コンクールで入賞している。なのに現代のピアニストは古典の演奏しかしない。クラシックが先細りしないためにも、こういう企画はとてもいいと思う。[avex]


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「ピュア・メンデルスゾーン」(セバスチャン・クナウアー:ピアノ) [ピアノ]

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[目][黒ハート] 今年はメンデルスゾーンの生誕200年で、このCDはそれを記念しての録音。よくある無言歌選集ではなく、無言歌からを含むピアノ小曲集だ。ハンブルグ出身のクナウアーは、同郷の作曲家に深い敬意の念を持ってこの録音に臨んだという。全体に叙情的な表現力が素晴らしく、天性のメロディー・メーカーによる曲自体の良さもあって、どの曲からも内的に充実した感銘を受ける。これだけ聴かせる気鋭のピアニストのレベルは非常に高いと思うが、ドイツは近現代に、コンサートホールに客を呼べるピアノ作品がほとんどないから、クナウアーもドイツ古典派・ロマン派を中心にしながら、他国の近代も手がけているようだ。オペラ・オーケストラ以外は不毛な近現代を持つドイツは、今では音楽の後進国という感さえ抱かせるのが残念だ。(写真はハンブルク港、たぶん)[BERLIN Classics]


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ドビュッシー「前奏曲集第1巻」(アルトゥーロ・ベネディッテイ=ミケランジェリ:ピアノ) [ピアノ]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] イタリア出身アルトゥーロ・ベネディッテイ=ミケランジェリを20世紀最高のピアニストの一人とすることに異論のある人は少ないだろう。留保がかかるとすれば、録音が少ないこと、特に晩年は演奏会をほとんど開かなかったことだろうか。ミケランジェリは基本的に教師であり、門下からポリーニ、アルゲリッチといった超弩級のピアニストを輩出した。ステレオ初期に録音したラベルのピアノ協奏曲はこのピアニストの驚くべき超絶技巧を示している(私はヨーロッパで同曲を同人の演奏で聴いたことがある。ピアニストもこのくらいになると、ステージに登場するだけで神様だ)。ドビュッシーの前奏曲集は、20世紀前半に書かれたピアノ音楽の最高峰の一つだが、技巧を誇示するような曲集ではないし、この演奏もそういうものではない。その代わりここにあるのは、完全無欠のピアニズムによる溢れるばかりの詩情だ。何度聴いても感銘を受ける至芸とも言うべき演奏。[Grammophon]


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ショパン「ピアノ・ソナタ第2番、第3番、子守歌、夜想曲、舟歌」(ピアノ:マルク=アンドレ・アムラン) [ピアノ]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] アルカンやカプースチンの超絶技巧曲の演奏で知られるカナダ人ピアニスト、アムランの久しぶりのメジャーな作曲家の録音は、驚くばかりの素晴らしい出来だ。マルカート調の丸みを帯びたピアノの音々の間から、むせぶようなロマンティズムがじわーっと放射してくる。冒頭は意表にも「子守歌」だが、じっと聴いていると何か感情のラジエーターでも前にあるかのような不思議な感興に襲われる。音自体はむしろ理知的なのにだ。ポリーニのような迫力で押してスカッとする感じとも、ポーランド系ピアニストのような清涼な感じとも違うが、緩急の要所を巧みに押さえた盛り上げ方のうまさにより、2つのソナタでも、随所からロマンティズムが滲み出てくる。カナダといえばグレン・グールド。アムランもまた変人で天才なんだろうか?(ジャケットの怪しげな絵はミレー)[hyperion]


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ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第5,6,7,15,19,20,26,30,31,32番」(ポール・ルイス:ピアノ) [ピアノ]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] イギリスの中堅ポール・ルイスによるベートーヴェンのピアノソナタ全集の完結盤(なんせロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックの教授だからとても若手とは言えない)。初期、中期、後期からほどよく採られているが、ブレンデルに師事したというだけに非常に抒情的で、どれも歌心が横溢しており、まるでシューベルトのソナタのようだ。このスタイルは全体を一貫しているので、強い説得力がある。どれも素晴らしいが、白眉は晩年の傑作、最後の3つのソナタで、ここでは内省的ではあっても深遠さは影を潜め、かわりに憧れを胸に秘めた非常に息の長い歌がある。これらのソナタの各楽章には「十分に歌い」「歌うように」「アリエッタ、歌うように」などと付記されているのだから、こういうアプローチは考えてみれば正当なものであり、時代はすでにロマン派期だったのだと思い当たる。どの一音にも細やかな表情が息づいていて、30番の3楽章などは胸に染み入る。英誌「グラモフォン」により「2008年度 年間最優秀賞」に輝いた。(3枚組)[harmonia mundi]


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ホロヴィッツ・メトロポリタン・コンサート(ホロヴィッツ:ピアノ) [ピアノ]

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[目][黒ハート] ロシア(ウクライナ)に生まれアメリカに帰化した20世紀を代表する大ピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツの1981年、77歳の時のライブ録音。スカルラッティ、ショパン、ラフマニノフなどを演奏している。ホロヴィッツは若い頃は超絶技巧ピアニストで鳴らしたが、その後10年以上隠遁状態になり、1965年劇的にカムバックした。隠遁生活の間も練習を欠かさなかったようで、驚異的な技巧は衰えが全く感じられない。この人のピアノの音は、中高域にエネルギーが高く、その分指の動きの見通しがいいが、超高域・低域が強調されないのでバランス的にやや聴きづらいところがある。ただここぞという時の超低音は恐ろしいほどの迫力だ。スカルラッティでは完璧な指の動きに魅せられ、ラフマニノフではその超低域の迫力に圧倒される。SHM-CDで音に生々しさがある。[RCA]


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クーラウ「ピアノ・ソナチネ集(作品55、88)」(イェネ・ヤンドー:ピアノ) [ピアノ]

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[目] クーラウはドイツに生まれ、後年デンマークに移住した作曲家・ピアニスト。ベートーベンより16歳年下だが、ほぼ同時代を生きた。ここに収められたソナチネのほとんどは、教育用の「ソナチネ・アルバム」に採用されていることから、たとえ名前を知らなくても、近所にピアノを習っている子供がいたら、耳にしているはずだ。人生にまるで悩みなどないかのような晴れ渡った明るい曲ばかりで、子供の情操教育にもぴったりだ。ハンガリー人ヤンドーは、初期のナクソスのピアノ録音を一手に引き受けていたようなレパートリーの広い人で、いくらかメリハリをきかせながらも、全体に澄み切った表情で、聴いていて心が落ち着く。意外とよく聴くCDだ。[NAXOS]


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中国ピアノ名曲集(陳潔ジー・チェン:ピアノ) [ピアノ]

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[目] 異文化に接するのは、いつも不思議な体験で、ワクワクさせられる。中国でピアノ音楽が作られたのは20世紀の初め頃からというが、ここには1950年代から1970年代に作曲またはピアノ用に編曲された曲が集められている。第1曲の「瀏陽河」は1950年代に書かれた創作オペラから、1972年にピアノに編曲されたものというが、民謡のような単純なメロディーが懐かしい。当時、既にポピュラーだった楽曲を編曲したというものが多く、どれも耳に馴染みやすい旋律を持っている。全5曲で10分にも満たない「児童組曲」は1953年作曲で、中国版「子供の情景」であり、中国の(日本でも西欧でもない)子供が遊んでいる様が目に浮かぶようだ。陳潔のピアノは、やや線は細いが、軽やかで躍動感溢れるリズムが好ましく、華麗な技巧がたっぷり聴ける。[NAXOS]


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ヴィラ=ロボス「実用の手引き I-IX」(ソニア・ルビンスキ:ピアノ) [ピアノ]

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[目][黒ハート] 「実用の手引き」という不思議なタイトルのこの曲集は、教育用に書かれたもので、全11集のうち9集48曲までがここに収められている(残りも出ている)。練習曲以前の、まるで子供がピアノの前に座って、知っている旋律を叩いているような音楽だ。素材は作曲者がブラジル各地で採譜した民衆歌で、どれも非常に単純で短い。似たような子供48人を並べられてもよく区別がつかないように、これらの曲は最初はみな同じように聞こえる。が、聴き慣れるにつれて、個性も感じ、不思議な懐かしさも覚えるようになる。「ガリバルディはミサに行った」「黄色いバラ」「かに」など、どれも楽しい。さしずめ、「ブラジル童謡集」といったところだろうか。ソニア・ルビンスキは、近所のお姉さんっぽい庶民っぽい演奏だが、このヴィラ=ロボスのシリーズでグラミー賞にノミネートされた。[NAXOS]


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メシアン「幼な児イエスへの20のまなざし」(ホコン・アウスタベ:ピアノ) [ピアノ]

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[目][黒ハート] 20世紀を代表するフランスの作曲家オリヴィエ・メシアンの代表作の一つ。メシアンは前衛にも非常に大きな影響を与えたが、作風は音響空間の感覚性・快感性・色彩性を追求して洗練されており、むしろ分かりやすい。この曲集は、イエスが生まれた時の状況を、第1曲「父のまなざし」から第13曲「降誕祭」を経て第20曲「愛の教会のまなざし」(恍惚とした終曲だ)までに音画化したもの。アウスタベはノルウェーのピアニストでパリに学び、1971年のメシアン・コンクールに優勝した。曲に対する共感のためか興が乗っていて、全130分を超える大曲を、親しみを感じさせるほど内容豊かに聴かせる。比較的弾かれる第10曲「喜びの精霊のまなざし」なども、技巧ではなく中味でぐいぐい引き込む。1993年録音(ダイナミック・レンジがあとひとつ)。この頃のナクソスは玉石混淆だが、これは玉の方で、隠れた名盤と思う。(2枚組)[NAXOS]


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シューマン「ピアノ独奏曲全集第2集」(セドリク・ペシャ:ピアノ) [ピアノ]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] クラーヴェス・レーベルにより現在進行している、新しい世代のピアニストによるシューマンのピアノ曲全集から。第2集はフランス系スイス人のペシャにより、「蝶々」「ダヴィッド同盟舞曲集」「ユーゲント・アルバム」等が収められている。メインの「ダヴィッド同盟舞曲集」が素晴らしい。若いシューマンが新しい音楽世界を切り開くべく意欲に燃えたこの作品が、こんなにいい曲だったとは、正直言ってこの演奏で初めて知った。全てのフレーズに生き生きとした情感が与えられていて、どの瞬間でも若々しいロマンティズムに感動することが出来る。「蝶々」も同じように素晴らしい。それにしてもこのシリーズ、第1集の心優しい詩情溢れるヒンギン・コリンズも最高だったが、本当に充実している。(欠点は価格が高いことだ!)(2枚組)[claves]


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ツェルニー「指使いの技法」作品740(フランチェスコ・リベッタ:ピアノ) [ピアノ]

 通称「ツェルニー50番」。いやというほど弾いた人も多いのだろう。ショパンのように表情の練習曲というものがないので、ひたすら指の練習だ。なんせ「写譜屋より多くの曲を書いた」と豪語したツェルニーだから、「こんな曲ならいくらでも書ける」といった曲が50曲、74分間続く。書くほうも弾くほうも聴くほうも一種のスポーツだ。ただ変化という言葉をどの程度の基準で使うかにもよるが、それなりの変化はある。また指使いのイディオムの中にはベートーベンやショパンを想わせる部分もあって興味深い。演奏はイタリア人らしくメリハリが利いている。「ライブ」とあるので、少数の聴衆を入れて通して弾かれたものと思う。私はどういう訳かこの手の音楽が好きで、けっこう聴いたりする。(ツェルニーは30番の1が無垢で一番いいけど)[VAI AUDIO]


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ベートーベン「ピアノ・ソナタ第23番≪熱情≫」他(清塚信也:ピアノ) [ピアノ]

 清塚信也はTVドラマ「のだめカンタービレ」で吹き替え演奏をした人という。渋谷のタワーレコードのミニコンサートに居合わせた時に聴いた、低音から高音まで日本人離れした量感たっぷりのピアノの音はこの録音でも楽しめる。素晴らしいのは「熱情」で、テクニックが冴えた1楽章もさることながら、抑えた情熱が高いエネルギーを内包しているさまを巧みに設計した2楽章から3楽章にかけては耳に残って忘れられない。後半のショパンは本格的なプログラムで、夜想曲、練習曲の4小品は情感の振幅が大きくて非常にいいが、「バラード1番」、「スケルツォ3番」、そして最晩年の「舟歌」(栄光と挫折が交錯するショパン芸術最高峰の一つだ)といった大曲は悪くはないものの、あと一つキラリと光るスリリングな瞬間が欲しい。一見キザだが(ホントにキザ?)様式感は保たれており、平易な語り口の自筆解説ともども私には好感が持てる。[WarnerClassics]


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ヘンデル「ハープシコード組曲」から(アンヌ・ケフェレック:ピアノ) [ピアノ]

 フランスを代表する女流ピアニスト、ケフェレックによる新録音。音楽の中心がドイツというのは、ことピアノ音楽については当てはまらない。ドイツはベートーベン、シューベルト、シューマンあたりでピアノ音楽の進化がほとんど(もちろん全くではないが)止まったのに対し、フランスはラモーやクープランから、ラベル、ドビュッシー、サティ、メシアンへと綿々と続く鍵盤音楽の歴史があり、ショパンにもパリの社交界を提供した。それを反映して世界的なコンサート・ピアニストも現在ではフランスの方が多く、その一部はドイツ音楽をも手がけて新風を吹き込む。ケフェレックもモーツァルトやシューベルトを取り上げることが多かった。ここでの演奏は、音色が明るくて構造が明晰、幸福感に満ちていて素晴らしい。有名な「調子の良い鍛冶屋」では、かなりのヴィルトゥオジティをも見せる。[MIRARE]


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ショパン/ゴドフスキー「練習曲集」(ボリス・ベレゾフスキー:ピアノ) [ピアノ]

 レオポルド・ゴドフスキー(1870-1938)は現在のリトアニアに生まれたピアニスト兼作曲家。自作曲のほか、ショパンの練習曲を、世紀末の退廃ムードが漂う作風でより技巧的に編曲したものを53曲残した(うち22曲は左手用)。ここにはそのうち11曲が対応するショパンの原曲とともに演奏されている。「なぜこんな編曲をしたのか」という問いに特別な事情はないようだ。「面白かったから」だろう。逆に「現代のピアニストはなぜこういうことをしないのか」と反問されるかも知れない。印象としてはグロテスクという以上にはないが、知的な刺激はある。1曲だけゴドフスキー自身の「Alt Wien(懐かしのウィーン)」と題する3拍子の小品(ここで聴けます)が演奏されている。私はこの手の曲が好きなので、このCDの中で一番よく聴く。モスクワ生まれのベレゾフスキーの演奏は、超絶的なテクニックで透明感あふれ秀逸。好事家向け。[WarnerClassics]


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ギロック「こどものためのアルバム」(伊藤仁美:ピアノ) [ピアノ]

 1998年に録音された伊藤仁美のギロック・シリーズの1枚。小品を集めたもので、まとまった曲集ではないようだ。1992年録音の「叙情小曲集」より演奏は一段と磨きがかかっていて1曲1曲がそれこそ輝いている。例えば最初の「ウィンナーワルツ」は両方に収められているが、こちらは思わず聴き惚れるほど魅力がこぼれている。以下、「コラール プレリュード」「古い農民歌」「フランス人形」「教会の鐘」などどれもいい曲だ。あくまでこどもの教育用だから、ここでの「手品師」にドビュッシーの「ミンストレル」(前奏曲集第1巻)の独創性も天才性も求めてはいけない。録音の素晴らしさも特筆すべきで、この暖かくリッチなピアノの音を捉えた日本ビクターの録音陣に対し私は心の底から尊敬の念を禁じ得ない。[Victor Entertainment]


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スコット・ジョプリン「ピアノ・ラグ第2集」(ベンジャミン・ローブ:ピアノ) [ピアノ]

 

 スコット・ジョプリンの待望の第2集。ローブはテキサス生まれの指揮者兼ピアニスト。音楽史に名を残すような作曲家には駄作というものがない。ここではあまり知られていない曲が中心になっているが、どれもよく出来ていてジョプリン特有の弾けるリズムを楽しく聴ける。ただ古典派、ロマン派を広くレパートリーに持ち音楽の著作もある教養豊かなロシア人ピアニスト、ペスカノフによる第1集は人生の酸いも甘いもとりまぜた私の最高の愛聴盤の一つだった。いざとなれば「指揮者の余技」として逃げる所があるローブは押し出しが弱く、通して聴くともう少し変化も個性もほしいと思わせる。ただ全体に愉しさが支配していることでは第1集よりラグタイムらしいかも知れない。[NAXOS]


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「浜辺の歌変奏曲~成田為三ピアノ曲全集」(白石光隆:ピアノ) [ピアノ]

 「浜辺の歌」は特別に好きな曲だ。昔この曲のピアノ・パートを弾いてみて、不思議な音色に何とも言えず魅せられたことがあった。このCDには秋田出身で、東京音楽学校在学中に「浜辺の歌」を作曲、ドイツに留学した成田為三の現存するピアノ曲が全て収められている。様々な様式が試みられていて、日本人の西洋音楽受容の一足跡を見る思いだ。値千金なのはやはり晩年期に作られたという「浜辺の歌変奏曲」。全体にモーツァルトのような古典的な形式感を持ち、早いパッセージの第7変奏から一気にコーダに突入するところなどは、曲も演奏もなかなか見事だ。好きな「浜辺の歌」の調べを8分半にわたって聴けるのだから、私にとってはこの曲だけで元がとれる。昔の懐かしさも感じる丸みを帯びたピアノの音はスタインウェイ。[KING INTERNATIONAL]


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