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「PRIMO MAYUKO KAMIO」(神尾真由子:ヴァイオリン、ヴァディム・グラドコフ:ピアノ) [器楽]

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[目] う~ん、渋いっ…。2007年のチャイコフスキー・コンクールに、若干21歳の若さで優勝した神尾真由子のリサイタル盤。第1曲目の「カルメン幻想曲」からして、若さにまかせたバリバリの演奏を予想すると面食らう。このストラディバリウスの音色は、深みがあるのは例によってのとおりだが、柔らかくてしっとりとしている。ピアノの音にもその傾向があるのだが、あながち録音のせいでもないらしい。選ばれている曲もそれに合わせて、シマノフスキの神話やショーソンの詩曲など、相当に渋いものが多い(最後のストラヴィンスキーが救い?)。もともと10代からかなりのキャリアを積んでいる人のようで、演奏は堂々として自信に満ちており、技術的にも弓が弦に吸い付くような感じで、相当なレベルだ。でも、やっぱり、渋い…。[RCA]


ヴィオラ・アンコール集「レミニセンス(Reminiscences)」(ユーリ・バシュメト:ヴィオラ、ミハイル・ムンチャン:ピアノ) [器楽]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] リサイタル盤は奏者その人と向き合えるのでよく聴くが、バシュメットほどの音楽家となると、別格というほどの感銘を受ける。ここには折りにつけ演奏会でアンコールに演奏された曲が、フランス・バロックから近代まで、おそらくはその時々への思いと共に集められている。プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」からは、余韻の深い終幕の音楽(私の好きなバレエで海外で観たことがある。いい演奏といい踊り手で観ると最後は本当にグッとくる)。マレの「古いフランス舞曲」はひなびているが親しみがわく。ブラームスの「子守歌」の慈しみの表情や、ラベル「亡き王女のためのパヴァーヌ」の穏やかな気品など、どれも素晴らしい。1758年テストーレは隈取りのはっきりした低音部に高音部が滑らかに伸びる。30年来のコンビというムンチャンのピアノも雄弁で絶品。[onyx]


サラサーテ「ヴァイオリンとピアノのための音楽2」(ヤン・ティエンワ:ヴァイオリン、マルクス・ハドゥラ:ピアノ) [器楽]

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[目] 現在進行中のサラサーテ全集から、オペラの編曲ものを中心とした第2集。第1集とともに、北京出身の若い女流ヴァイオリニスト、ヤン・ティエンワが弾いている。この人は小澤征爾によって高く評価されたようで、とにかく正確な音程、正確なリズム、生き生きとした表情など、やったらめったらうまい。中国はクラシック音楽の新興国らしくメカニック中心だ(特に上海などより北京出身者でその傾向を感じる。ロシアのモスクワと共通したものがあるかも知れない)。ただこのCD、オペラの編曲が中心だが、これらの編曲はいまひとつ平凡でつまらない。むしろサラサーテのオリジナルの第2曲「ドモンの思い出」や第7曲「モスコヴィエンヌ」が、元気いっぱいで、感覚的な快感を感じさせて聴かせる。[NAXOS]


バッハ「フーガの技法」(ピエール=ロラン・エマール:ピアノ) [器楽]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] バッハ最後の作品、未完の大作「フーガの技法」は、苦手な曲だ。この楽器指定のない曲はどんな演奏で聴いても、途中で眠くなる(そもそもどういう聴かれ方を想定して書かれたのだろう?)。ところがこの演奏は、これまでの老建築物が、いきなり壁や柱まで含めて総ガラス張りになったように全ての構造が見渡せるクリスタル・クリアなもので、眠くならないどころか、非常に高度な知的な刺激に富んでいる。グールドのゴールドベルグ旧盤ほどのインパクトがあり、きっとバッハ演奏史に残ると思う。このフランスのピアニストは、もともと現代曲を弾いていた人で、私は以前に買ったメシアン「世の終わりのための四重奏曲」のCDで初めて知った。メシアン弾きがこんなに素晴らしいバッハを演奏すると、どうしてこんなことが起こるんだろうかとつい考え込んでしまう。[Grammophon]
追記:答えはここです。


「シャコンヌ」(木嶋真優:ヴァイオリン、江口玲:ピアノ) [器楽]

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[目] 情念のヴァイオリンだ。コンクール出身者は、たいてい明るくて飛び跳ねるようなスタイルを持っている。神戸出身の木嶋真優はコンクールの実績はあるが、そういうタイプではない。むしろ暗い情感でねっとりと弾く感じで、若い女性としては意外性も新鮮さもある。私がよく聴くのは、チャイコフスキーの「憂鬱なセレナード」で、この曲の懐かしさを含ませたメロディーには聴くたびごとに「いい曲だなあ」と思う。演奏はここでも相当にねっとりしているが、曲想には当然にマッチしている。ただおそらくはメインのストラヴィンスキー「ディヴェルティメント」は、いい部分もあるが、もう少し洒脱さが欲しく、聴いていていまいち興が乗らない。一曲ごとにはよく聴くのだが、通して聴くには少しは軽さ、力の抜けた部分がないとしんどい。[Exton]


「イン・ア・ステイト・オヴ・ジャズ」(マルク=アンドレ・アムラン:ピアノ) [器楽]

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[目] 「クラシックCD界のロールス・ロイス」を名乗っていた高級レーベル(?)ハイペリオンからの実に変わったCD(コピーの方はローロス・ロイス社からの抗議で止めたらしいが)。クラシックのピアニストで現代音楽をした人は多いが、そうでない人もいて、ここに収められたフリードリッヒ・グルダ、ニコライ・カプースチン、アレクシス・ワイセンベルクはジャズをやった(といっても多分にポップスという意味だが)。現代音楽は「著しい身体的リズムの衰退」で八方塞がりになったようなところがあって、最近はむしろそれに対するアンチ・テーゼとも言うべきこういった方向が好まれている。ワイセンベルクの「シャルル・トレネの6つの曲」は、匿名で出したレコードからの採譜による演奏というが、大変に洒落ていて、表題作ともども楽しめる。カプースチンの代表作ソナタ第2番も活気があって面白い。アムランのピアノは音が乾いているが、相変わらずの超絶技巧だ。[hyperion]


ヴァイオリンによるオペラ幻想曲集(リヴィア・ソーン:ヴァイオリン、ベンジャミン・ローブ:ピアノ他) [器楽]

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[目][黒ハート] ソーンはアメリカ出身(韓国系?)。「カルメン」のようによく知られたものから、オペラ自体誰も知らないものまで9曲収められている。全体に優しさ、暖かさを感じる演奏で、コンサートホールというよりサロンの雰囲気だ。非凡とは言えないが、これ以上何を望むだろう? 2曲目の「ローエングリン」からは、第3幕と第2幕の婚礼の合唱をごく簡素に編曲したもので、ほんのりとした気分になる(そう、ローエングリンには婚礼の合唱が2つもあるのです! 本当に聴き応えがあって素晴らしいのは男声も加えて最後は金管で盛り上がる第2幕の方です)。「ばらの騎士」は名旋律によってオペラの筋を追ったオーソドックスなもの。聴かせるのはビゼーの「真珠採り」からの「聖なる寺院の奥深く」で、ヴィオラを加えてメロディーが何とも言えずロマンチックだ。[NAXOS]


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「アート・オブ・ザ・ギター」(デビッド・ラッセル:ギター) [器楽]

 日本ではほとんど話題になることもないが、米国グラミー賞にはクラシック部門もあって、ラッセルは器楽部門で2005年の第47回グラミー賞を受賞している。米国をベースにする演奏家には非常に名誉な賞らしく、ラッセルも大変に嬉しかったようだ。このギター名曲集は、その翌年の2006年に録音されたもの。ポップスの編曲ものはなく、アルベニスなどのスペインものを中心に、グリーグの叙情小品集とかを加えた純クラシック構成になっている。特によく聴くのがソルの「モーツァルトの主題による変奏曲」。「魔笛」から採られたようだが、言われてみれば?という程度の引用だ。強い個性は感じないが、聴き所は押さえられていて、収められた21曲全部が楽しめる。[TELARC]


ローラ・ボベスコ「タイスの瞑想曲-バイオリン・リサイタル」(ジャック・ジャンティ:ピアノ) [器楽]

 ローラ・ボベスコは、ルーマニア生まれのベルギー国籍で、バイオリン奏法上のフランコ・ベルギー楽派に属する人。この楽派は美音を追求して流麗な音楽作りを行い、代表格にアルテュール・グリュミオー、現役ではオーギュスタン・デュメイがいる。ボベスコは日本人が「発見」し、よく招聘されていた関係から、日本でとりわけ人気が高かった。1981年日本録音で最近再発されたこのCDは、一瞬アナログかと思うほど音が柔らかいが、音楽は意外にしっかりしていて、音楽大学教授らしい厳しさも伺える。表題曲と2~3曲以外はあまり演奏されることのない曲が多く、リサイタル盤としては通好みだ。女性らしい優しさと甘さ、この楽派からしか味わえない陶酔感に、しばし時を忘れて聴き入るCDだ。ベルギーという不思議な国の文化に対する理解も深まる。[Philips]


「ロマンツァ-バイオリン小品集」(竹澤恭子:バイオリン、江口玲:ピアノ) [器楽]

 2003年録音の「世界のタケザワ」初の小品集。ニューヨークのジュリアード音楽院に学んだスタイルは、「華麗な技巧を誇示して」というのとは一線を画する「ひたすら音楽の内面へ」というものだ。このこと自体が世界の音楽界(日本ではなくっ!)の王道を行く。だが、ストラディバリウスのややくすんだ深みのある音色をもって、音楽は陰影が深くて、木目が細かいながらも起伏が大きく、聴き手は結局はそれを可能とした技巧の高さに驚嘆することになる。スークの「愛の歌」、ワーグナーの「ロマンツァ」(こんな曲があったの?)などの秘曲を含めて、どの曲もじっくりとあるいはしっとりと聴かせる。聴いていて演奏者との間で内的なコミュニケーションが成立しているような気がしてくる親密な感情表現を持った演奏だ。[BMG]


ヴィラ=ロボス「ギター独奏曲全集」(ノーバート・クラフト:ギター) [器楽]

 20世紀ブラジルを代表する作曲家ヴィラ=ロボスのギター曲を集めたCD。多作家で自らギターを弾いたヴィラ=ロボスのギター曲全部がCD1枚というのは予想外だ。最初に「Choroショーロ」(ブラジル大衆音楽の一形式でchorar(泣く)から来ているという)が「ブラジル民衆組曲5曲」など計6曲、次に「練習曲12曲」「前奏曲5曲」という構成だ。私がよく聴くのは「民衆組曲」からの「マズルカ」「スコティッシュ」「ガボット」などで、民謡から旋律を採っているのか、ひねったところのない静かな旋律は心にすんなり染み込んでくる。カナダ人のクラフトはNAXOSの一連のギター・コレクションの音楽監督をもしている大御所だそうで、演奏は感情をよく伝えて非常にいい。[NAXOS]


フィルハーモニカーの至芸「ヴォルフガング・シュルツ&マティーアス・シュルツ(フルート)」(乾まどか:ピアノ) [器楽]

 ウィーン・フィルのフルート奏者はヴォルフガング・シュルツしか知らない。無理もない。1970年、24才の時から現在まで同楽団の主席フルート奏者を勤めているという。この人の音色の特徴は、この楽器にしては厚みがあることだ。父子共演の第1曲は、モーツァルトの2台のピアノのためのソナタK.448の編曲もので、第1楽章から玉を転がすような素晴らしく幸福感あふれるフルートの音色が部屋いっぱいに広がる。2本のフルートの息の合った掛け合いは、まるで「モーツァルトはこう弾くんだ」とレッスンを受けているような気になる。後半はフランス近代からで、フランセの無伴奏曲「2羽のオウムの対話」は楽器の特徴をよく現していて大変に楽しめる。24金(マティーアスは18金)の日本のムラマツ製フルートは、音色に深みがあってなおかつ素晴らしくスタイリッシュ。極上の録音と無二の演奏は、NAXOSもここまで来たかという感慨を持つ。[NAXOS]


クライスラー「ロシア・スラブ小品集」(ニコラス・ケッケルト:バイオリン他) [器楽]

 ニコラス・ケッケルトはドイツ出身で2002年チャイコフスキー・コンクール第5位(ドイツ人の入賞は初めてという)。ロシア人教師に学んでいるので、ロシアものを得意としているようだ。ドイツ人らしく音に血が通っていて、音楽の骨格の見通しがいい。世界の音楽ファンはこういうドイツ的なバイオリンからは疎遠になっているので新鮮だ。録音のせいか高音部が柔らかく、気持ちよく聴き入ることが出来る。ただこの興味深いCDに一つだけ注文を付けるとすれば、リムスキー=コルサコフ、チャイコフスキー、ドボルザークからの17曲76分は大サービスだが、やや雑然としている。もう少し工夫があってよかった。[NAXOS]


白鳥(ナージャ・サレルノ=ソネンバーグ:バイオリン) [器楽]

 EMIClassics決定盤1300シリーズから。このシリーズは音に弾力性があって大変に好評のようで、現在までかなりの数が出ている。このCDも音が生々しい。原盤のタイトルはガーシュウィンの「It Ain't Necessarily So」で、ジョプリンなどのラグタイムも含まれる。ソネンバーグはボーイングにうまさがあって、音に粘りがあり、独特のリズム感の曲をやや奔放に弾いたり、サン=サーンスの「白鳥」のように感情を込めて音を長く引っ張ったりするようなところに良さが現れるので、これらの選曲は演奏の性格をよく表している。日本人の無個性なリサイタル盤と比べると、残念ながらさすがと思わせるCDだ。[EMI Classics]


バリオス・ギター作品集(エンノ・ボールホルスト:ギター) [器楽]

 パラグアイのギタリスト兼作曲家アグスティン・バリオス・マンゴレ(通称バリオス)のギター作品集。バリオスはジョン・ウィリアムズも作品集を出しており、ギターの世界ではよく知られた作曲家だ。有名なのは第1曲「ワルツ第3番」、第6曲「最後のアルペジョ」(ウィリアムズのオハコ)、第16曲「森に夢見る」などで、オランダ出身のボールホルストは、感情のこもった、堂に入った素晴らしい演奏を聴かせる。1994年デジタル録音のソニー・クラシカル原盤で、音質はよい。曲目解説はないが実売600円位。これでパラグアイとは何の関係もない(?)ジャケットに文句を言ったらバチが当たるだろう。[Brilliant Classics]


ソロ・ハープのための音楽(エリザベス・ハイネン:ハープ) [器楽]

 ソロ活動を行う傍ら、フィラデルフィア管弦楽団のハーピストとしても活躍するエリザベス・ハイネンのハープ独奏曲集。NAXOSのこの手のものにはずれはない。強い個性は感じさせないが、安心して曲の素晴らしさに身を委ねられる。ショパン「練習曲作品25の1(エオリアン・ハープ)」は、「ショパンはこれをピアノでまねたんだ」などと感心してしまう。ラインホルトの「即興曲」は、中間部の行進曲風のメロディーが耳に快い。リストの「溜息」も当然のようにいいが、ドニゼッティ「ランマームーアのルチアからのハープ独奏」はよくあるサワリ集を期待すると短かすぎてがっかり。2001年録音(NAXOSのここ数年のものは録音もよい)。[NAXOS]


ポッパー「チェロのための練習曲全集」(マルティン・ルメル:チェロ) [器楽]

デビット・ポッパーは、チェロのための小品で知られるチェコの作曲家。この3枚組CDには、「15曲の初級練習曲」「10曲の中級練習曲」(1枚目)「上級練習曲(40曲)」(2、3枚目)の作品が収められており、初級がもう1台のチェロ伴奏付き、あとは無伴奏曲だ。バッハの無伴奏チェロ組曲は、カザルス以前は単なるチェロの練習曲と見られていたらしいが、これらの曲集、特に上級練習曲はバッハ同様に、芸術音楽として十分に楽しめる。私はこれらをよくCD半枚分ぐらいを通して聴く。なにか黙々と弾く修業僧につきあっているような感覚になる。なんといっても、録音がいいのが特徴で、高音部まで抜けた豊かな胴鳴りのチェロの音の生々しさは格別だ。[musicaphon]


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