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ブーレーズ「ル・マルトー・サン・メートル(Le Marteau sans maître 主のない槌)」他(ヒラリー・サマーズ:メゾ・ソプラノ、ピエール・ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン) [声楽]

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[わーい(嬉しい顔)] 20世紀に書かれたあらゆる「前衛音楽」の中で最も成功した曲の、作曲者自身の指揮による5度目の録音(奏者は7人)。9楽章からなる全体は、3つのグループに分かれ、いくつかではルネ・シャールによる前衛詩が朗唱される。メシアンの影響下に12音技法をリズムなどの要素に拡大した流れの延長上にあり、拍子は1小節ごとに変化して演奏は困難を極めるという。だが、さすがに5度目となると響きはふっくらとしてゆとりも感じる。特に第2,4,6,8楽章のグループは暖色系のイメージで、シロフォン(木琴)やフルートやギターの響きが耳に快い。音楽の内部構造には数学的な秩序が追求されているようだが、音楽史で同じことをしたのはバッハだ。かつてこのグループでは「フーガの技法」を聖典のように研究し、若き日のピエール=ロラン・エマールもそこに参加していたという。それは最近素晴らしい成果となって結実している。[Grammophone]


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高田三郎 「混声合唱組曲『水のいのち』、『心の四季』」(高田三郎:指揮、神戸中央合唱団、大久保混声合唱団他) [声楽]

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[目][黒ハート] 「水のいのち」は日本を代表する合唱曲だ。日本各地での公演数、楽譜の販売数などからすると、戦後の日本の創作音楽を代表する曲と言っていいかも知れない。全5曲で、「雨」「水たまり」「川」「海」で循環する水の態様を、そして最後の「海よ」で万物の浄化が力強く歌われる。そしてそこに人間の魂の上昇と下降の対立が重ね合わされる(こういう寓意は最近ではあまり好まれないかも知れない)。合唱音楽は西洋音楽の重要なレパートリーだが、大半が宗教曲だ。ただ西洋では人間が下降しないように支えているのは宗教だが、ここでは水=自然だ。音楽は古典らしく、凛とした格調の高さを持っている。同時期に書かれた「心の四季」もほとんど同じ傾向を持つ作品で、両組曲ともしっとりとした第1曲が印象に残る。ショップでふと手に取って買ったCD。1981年録音。(なおこれは混声合唱版ですが、素晴らしい男声合唱版の演奏がここで聴けます。)[VICTOR]


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MAKI MORIリサイタル「あなたがそばにいたら」(森麻季:ソプラノ、山岸茂人:ピアノ) [声楽]

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[わーい(嬉しい顔)][黒ハート] 今を時めく森麻季のデビュー・アルバムで、2003年ニューヨークでのリサイタルの実況録音盤。オペラハウスで舞台に現れただけで華を感じさせ、一声を発しただけで聴衆を魅了する歌手はごく限られる。森麻季はそういう歌手の一人だ。まずは容姿(これが重要)。そして清らかで透明な声(たまらない)。次に完璧なコロラトゥーラの技巧(努力家。ずいぶん勉強したんだろうなぁ)。最後にどんなに人気が出ても自分を失わない真摯な姿勢(この人は依然としてバッハを主要なレパートリーとしている)。このCDでは技巧的なヘンデルのアリアを中心に、フランス歌曲などを配しているが、私が一番よく聴くのは、オッフェンバックの「ホフマン物語」からの楽しい人形のアリアだ。森麻季は私が大好きなソプラノであり、同時進行形で時代を共有できることに幸福感さえ感じるほどだ。[avex]


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ドイツ民謡VIII 子守歌集「すべては安らぎの中で」(ヴェルニゲローデ青少年少女合唱団、フリードリッヒ・クレル:指揮) [声楽]

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 [目][黒ハート] 旧東独ハルツ地方の小さな町ヴェルニゲローデにある合唱団による子守歌集。ドイツと世界の子守歌が31曲収められている。オリジナルのジャケットがインセットで配され、あとはニコニコ動画風だ。この合唱団のシリーズは徳間ジャパンとドイツ・シャルプラッテンとの共同で制作され、1995年録音の本作第8集が最後になる。最近初期のものがリマスターされて発売されているが、音はこの1000円盤の方が録音が新しいだけに格段に良い。ほとんどが知らない曲だが、どれも心が洗われるようなものばかりで、旧東独にあったのかもしれない慎ましやかな幸福について考えさせられる。改めて素晴らしいと感じ入るのがブラームスの子守歌で、つくづくこの作曲家は本当の民謡のようなメロディーを書いたのだなあとここでも感心してしまう。[Deutsche Schallplatten]


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バッハ「クリスマス・オラトリオ(第1部~第3部)」(ハンス=クリストフ・ラデマン指揮、ドレスデン室内合唱団、ドレスデン・バロック管弦楽団他) [声楽]

 

 毎年、年末には何らかのクリスマスのCDを買う。今年はアルノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによる「クリスマス・オラトリオ」の話題の新盤が出たが、SACDは買わない主義なのでパス。その代わりに、2004年録音の前半のみを収めたこの1枚ものCDを買った。指揮のラデマンは、ドイツ生まれの合唱指揮者で、ドレスデン室内合唱団を創設したという。出だしから、細かいアーティキュレーションに合唱団がぴったりと一つになり、素晴らしく整然として生き生きとした歌唱が聴ける。旧東独の地のオリジナル楽器によるオケは、イギリス系に較べて、響きがより硬質・透明で明るく、個々の楽器の音色が新鮮だ。独唱陣もよい。国際色豊かなメジャーとは違うこのようなローカルな演奏に接すると、より素朴にバッハを聴く喜びを感じることが出来る。教会での録音も秀逸。[Raumklang]


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「The Book of Hours」他(ルネ・フレミング:ソプラノ、ブラッド・メルドー:作曲・ピアノ) [声楽]

 ジャズ・ピアノの鬼才ブラッド・メルドーがリルケの詩7編に作曲し、フレミングが歌った一風変わったCD。「神が人間を作った」のが正しければ、「人間が神を作った」というのも正しい。だから「神が人間を作ったその瞬間に、人間が神を作った」というのも正しい。とすれば、「神と人間は同一だ」とも言え、「人間の音楽的な創造力は神の現れ」とでも言うかのような、本作品が生まれた。歌の旋律は目的もなく彷徨い、メルドーのピアノは最後の曲の「私の目がなくても私にはあなたが見える…」でかなりの盛り上がりを見せる。さすがと思う。最後に「至高の愛」という旋律を持った分かりやすい曲も用意されている。それにしてもフレミングの英語はもう少し聞き取りやすくならないのだろうか。[NONESUCH]


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マーラー「さすらう若人の歌」他(コンラット・ヤルノット:バリトン他) [声楽]

 マーラーの「さすらう若人の歌」「リュッケルトによる5つの歌」「交響曲『大地の歌』から第6楽章『告別』」をイギリス出身で今はドイツに住む若いヤルノットが、鮫島有美子さんの夫(今でも?)としても知られるヘルムート・ドイチュのピアノ伴奏で歌っている。素晴らしいのはやや発声にクセを感じるバリトンではなく、聴き手を引き込む音楽性を備えたドイチュのピアノだ。「告別」のピアノ伴奏版の録音は非常に珍しいがこのCDの最大の聴きもので、28分余の長大な歌曲を、ピアノの豊かで彫りが深く自信を持った感情表現によって時間を全く忘れさせるほどに仕上げている。ただ廉価盤とはいえ、この演奏の素晴らしさを理解する上で歌詞の内容は必須であり、せめてドイツ語のテキストは付けて欲しかった。[Oehms Classics]


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オッター・シングズ・アバ(アンネ・ゾフィー・フォン・オッター:歌) [声楽]

 天下のオッターが、70年代のディスコ・シーンに君臨したABBAのメンバーで作曲家のベニー・アンダーソンの曲を12曲+1曲(日本盤ボーナス)を地声で歌っている。2組の夫婦の離婚を経て活動を停止したABBAの曲の内容は案外ウェットだったりするが、軽快なリズムに隠れていた。オッターはそれをしんみりと歌うので、「The Winner Takes It All」などはジーンとしたりする。でもどんなに出来が良くてもしょせん余興。オッターがこれらをステージで歌うわけではなし、オペラ歌手のカラオケに付き合ったような気分は付きまとう。録音は優秀。[Deutsche Grammophon]


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カンターテ・ドミノ(トルステン・ニルソン:合唱指揮ほか) [声楽]

 スウェーデンで1976年ころに録音されて以来、30年間聴き継がれてきたクリスマス・レコードの名盤。今なおオーディオ・システムの音色のリトマス試験紙とも言うべき名録音盤で、SACDも出ているがこれはCD盤。中でもよく使われるのが「ジゼル」で知られるアダン作曲の「Julsång」(おお聖なる夜)で、ソプラノとオルガンと合唱の響きが敬虔な雰囲気を持っていて、心が洗われるような美しさを持っている。レーガーの「マリアの子守歌」も穏やかで清澄な響きが印象に残る。「きよしこの夜」や「ホワイト・クリスマス」のような親しまれた歌もちゃんと入っている。全体として北欧の質素で純朴なクリスマスの雰囲気を伝え、1年間の都市生活の汚れを清めてくれるようなCDだ。[proprius]


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シューベルト「冬の旅」(クリスティアン・ゲルハーエル:バリトン) [声楽]

レコード・アカデミー賞受賞の名盤。私はこのCDを聴くまでは「冬の旅」は暗くて、特に後半は苦手だった。シューベルトの歌曲集では「美しき水車小屋の娘」が若々しくて切なくて最高だと思っていたが、これはゲルハーエルの声が柔らかくて、若さもあり、切なさもありで、非常に好きになった。特に「宿」や「辻音楽師」は美しい音楽で切々した想いがよく伝わってくる。私の買ったのは国内盤なので対訳も付いてくる。なぜこれが1000円で買えるのだろう?[Arte Nova]


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