ブルックナー「テ・デウム、ミサ曲第1番」(マシュー・ベスト指揮コリドン・シンガーズ、コリドン・オーケストラ) [声楽]
ブルックナーは、もし交響曲第9番を完成できなかった場合には、この「テ・デウム」を終楽章に代えて演奏してほしいと語ったと言われる。その「テ・デウム」(ラテン語で「You God」、たぶん)だが、初めて聴いた。 これがいいのだ。内容はひたすら神の偉大さを称える開放的で明るい音楽だ。ブルックナーは9番を神に捧げる予定だったから、その隠されたプログラムは、「天地創造」というのが私の推測だ。そうすれば終楽章が「テ・デウム」というのはぴったりする。ただ今日、まず9番とこれがペアで演奏されないのは、①ハ長調であり、9番のニ短調とは遠すぎる、②あまりにも9番が宗教的になる、③明るすぎて9番の陰影感に欠ける、といった理由からだろう。演奏は、力の限りを尽くしたような発散的な歌いぶりが、宗教的なエクスタシーを感じさせる素晴らしいもの。
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