ヴァイオリン小曲集「魔弓伝説」(イヴリー・ギトリス:ヴァイオリン、岩崎淑:ピアノ) [器楽]
大御所ギトリスによる、1994年72歳の時の東京での録音。この1951年のロン=ティボーの覇者は、若い頃はベルクやパガニーニの協奏曲も録音したようだが、最近は小品集が中心だ。大時代のヴァイオリン奏法(というより演奏家のあり方)を現在に伝える、生きた化石のような人で、あたかも作曲家や聴衆の上に立って、自分が作曲したかのように音楽に入り込んで弾く。例えばシューマンの「ロマンス」。フレーズの隅々にまでテンポが微妙に揺れるギトリス節がぷんぷんしているが、聴き慣れたメロディーの歌心に思わず聴き惚れてしまう。一番聴くのはフィビッヒの「ポエム」。チェコの作曲家とその女弟子との愛の産物の一つという曲で、ギトリスは本当にたっぷりとした情感で、3分44秒の甘~い、甘~い夢を、聴く者に見させてくれる。[BMG]
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